なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?|日本のヒーローは“公務員”だった【書評】
昔から日本のヒーローは「公務員」だった
日本では昔から、ヒーロー=公務員でした。
ウルトラマンは宇宙警備隊員、暴れん坊将軍は将軍、水戸黄門は副将軍。
そして、踊る大捜査線や相棒の主人公も警察官。
つまり、正義を象徴する職業の多くが「お役所仕事」の世界にあります。
いまも子どもに人気の職業ランキング上位は、やはり公務員。
その理由は明快で、「安定」と「安心」です。
しかし同時に、お役所仕事は不満や皮肉の対象でもあります。
味方であれば頼もしいけれど、敵に回すと厄介。
そして、「お役所仕事」という言葉そのものが、批判の代名詞になっています。
「お役所仕事」とは何か?
『大辞林第三版』では、お役所仕事をこう定義しています。
形式主義に流れ、不親切で非能率的な役所の仕事振りを非難していう語。
一方、『アンサイクロペディア』ではさらに皮肉に満ちています。
公務員が体力や精神を疲弊する事無く、自分たちのみ安定した繁栄をもたらすためにあみ出された優れたシステムのこと。
「建前は国民のため」と言いつつも、行動が伴わなければ信頼されない。
言葉はごまかせても、行動はごまかせません。
目立つ公務員と、目立たない公務員

ニュースで名前が出るのは、主に特別職の公務員──国会議員や知事などです。
彼らは任期付きで、勤務時間の概念がありません。
つまり、結果責任の世界に生きています。
特別職は「自己の責任で職責を果たすことが期待され、職務には勤務時間という概念がない」という世界です。
一方で、ほとんどの公務員は一般職。
いわゆる公務員試験で採用された人たちです。
彼らはテレビにもSNSにも出てこない。
しかし実際の行政サービスを支えているのは、まさにこの層です。
「お役所仕事」と揶揄されながらも、現場で変化を生み出す人たちがいます。
彼らがいなければ、日本はとっくに停滞していたかもしれません。
「お役所仕事」を変えた公務員たち
書籍『なぜ、彼らは「お役所仕事」を変えられたのか?』(加藤年紀/学陽書房)には、
前例主義や慣習を打破した10人の公務員のストーリーが紹介されています。
まるでNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』の活字版。
インタビューを通して、彼らがどのように常識をアップデートしてきたかが見えてきます。
彼らが変革できた8つのポイント
強烈な課題意識をもっていた
「決まったことを決まった通りに」ではなく、“おかしい”と思う感覚を持っていた。
そこからすべてが始まっています。
公務員であることを活かした
「公務員だからこそ」信頼してもらえた場面もありました。
時にはその堅いイメージを逆手にとり、コスプレなどで注目を集めた事例も紹介されています。
コンプレックスをバネにした
「自分には足りない」と感じたとき、逃げるのではなく学びに変える姿勢。
資格取得や勉強で現場に還元していた人もいました。
継続できた
一時的な努力ではなく、何年も続けた人だけが成果を出せた。
継続はまさに“お役所改革の王道”です。
誰のメンツもつぶさない改革(アップデート)
「改革」という言葉ではなく、「アップデート」。
既存の人たちの顔を立てつつ変えていく。
論破ではなく、心の壁を溶かすという姿勢が印象的でした。
課題を可視化した
感覚で語るより、データと事実で伝える。
数字があることで、共感から納得へと変わります。
地道な改善で信頼を積み上げた
「何を言うか」より「誰が言うか」。
実績の積み重ねが発言の重み=信頼残高を生むのです。
「できない理由」より「できる方法」を考えた
挑戦を避けるための理由は、誰でも言えます。
彼らは「どうすればできるか」を問い続けていました。
──これは公務員に限らず、すべての仕事人に通じる姿勢です。
本書を読んで感じたこと
彼らのストーリーは、ただの成功談ではありません。
制度の隙間を縫いながら、現場を変えていった軌跡でした。
とはいえ、私はひとつだけ希望を述べたい。
「好事例」だけでは学びに限界があるということです。
むしろ、失敗事例のほうがリアルで学びが多い。
「こんなことをして失敗した」──そんな公務員たちの集大成本も、ぜひ読んでみたいものです。
(売れにくいのかもしれませんが……)
まとめ:ヒーローは、今日も公務員の中にいる
「お役所仕事」を変えようとする公務員たちは、まさに現代のヒーロー。
決して派手ではないけれど、地道な努力で社会を支える人たちです。
これからも、そんな公務員が増えていくことを願っています!






















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